貨幣保有のデメリット

貨幣保有需要のデメリット

政府の財源調達手段には、大別して、課税、公債発行、貨幣発行の三つが考えられる。このうち貨幣発行によって得られた財源は、貨幣発行益とも呼ばれる。

 

政府債務残高が発散する勢いで増大する一方、増税も困難な状況の中で、貨幣発行益への期待を高める向きがある。大震災からの復興財源に関連して、「復興国債の日本銀行直引き受け」を主張する人々などは、まさにその代表だといえる。けれども貨幣発行益は、得たいだけいくらでも得られるというものではない。そして、わが国の現状では、獲得可能な貨幣発行益は使い尽くしてしまっている可能性が高く、追加的な貨幣発行益の確保は、残念だが無理ではないかと思われる。

 

公債を追加発行するためには、公債保有需要の増加がなければならない。買ってくれる者がいなければ、公債を売ることはできない。同様に、貨幣を追加発行するためには、貨幣保有需要の増加がなければならない。ここで正確に理解すべき点は、お金はいくらでも欲しいのが人情だとしても、貨幣保有需要の額は有限だということである。

 

たとえば、日銀が10兆円分の国債を直接に引き受けて、その対価として10兆円分の銀行券を政府に渡したとする。政府は、この10兆円を公共事業等に支出することになる。すると、10兆円分の銀行券は、工事代金の支払い等の形で民間の手に渡る。

 

そしてこの10兆円分の銀行券を最終的に民間部門の誰かがそのまま保有し続けてくれるのであれば、話はここで終わり、10兆円の貨幣発行益が得られたことになる。しかし、10兆円を銀行券(現金)のままで保有し続ける余裕が民間部門にあるのだろうか。多くの企業や家計にはそうした余裕はなく、受け取った銀行券はごく一時的には壬丸に置かれても、すぐに別の支払いに充てられることになる。もしくは、銀行に預金されると考えられる。

 

もっとも、今のような低金利状況では、現金のまま「ダンス預金」される分もあるだろう。これらの一時的保有と「ダンス預金」の増加が10兆円に達しなければ、残りはさまざまな支払いに充てられた結果として民間銀行に還流してくる。民間銀行は、余分な現金を手元に置いておくことはしないから、銀行券は日銀に還流し、その分だけ準備預金の残高が増えることになる。したがって、次の問題は、民間銀行が増加した準備預金を保有し続けるかである。現在は、準備預金に付利する(利子を支払う)仕組みがあるので、十分な利子を支払うことにしたら、保有し続けるだろう。

 

しかし、この場合には、日銀に還流した分については、短期国債の形で市中消化したのと実質的に同じである。日銀が支払いを増やした金利分だけ、日銀からの国庫納付金が減少するから、政府が金利を支払ったのと効果は同じになる。他方、民間銀行が準備預金残高を元に戻そうとするならば、日銀は結局、既保有の国債を市中に売却するか、民間銀行への貸出金を回収するかして、バランスシートのサイズを圧縮せざるをえなくなる。

 

要するに、民間部門の現金保有需要が増えないかぎり、貨幣発行益は得られない。しかし、現金保有需要は、すでに過去の実績よりかな口膨張している。これがもっと増えてくれると期待できる根拠はない。

欧米株安の流れもあり、利食い優勢の相場展開になりそうだ。ドイツ連邦議会で欧州金融安定化基金の機能拡充についての法案採決が予定されているため、様子見ムードが強まりそうである。NY原油先物相場が大幅に下げていることもあり、昨日強い動きが目立っていた素材株は上げ一服といったところか。